小国び塾活動日誌

藤浩志プロデュースによる「小国び塾」参加メンバーが、坂本善三美術館の収蔵品から発想して取り組む「アートなプロジェクト」の記録です。

『山笑のタコ1 ハルノシュ』

 収蔵庫で24程もある全ての『山童閑遊』の挿絵に目を通したのは,7月17日ぐらいだったと思う。その時,その中の一枚の画面右隅に何気なく描かれた蛸のような存在に気がついた。それは,蛸といえば蛸。でも,別の何かのように見えなくもない。例えば,宇宙人とおばけの間の子ぐらいのものに。

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 ところで,蛸のおばけといえば,歌川芳員の浮世絵『百種怪談妖物双六』の右上に描かれている,漁船や漁師を海に引き込むという『土佐海の蛸入道』などが古くから知られている。何となく怖いイメージだ。だが,善三さんがスケッチした蛸のような存在は,それとは随分印象が異なる。そこには,現代のゆるキャラにも通じる愛嬌や親しみやすさが感じられる。このようなスケッチを描く善三さんは,きっと,ユーモラスな一面を持ち合わせていたことだろう。これは,立体にしてその雰囲気を試す価値があると考えた。

 そこで,ひとまず,赤い色のスタンダードなものを色パラフィン紙で作ってみることにした。

 

 出来上がってみると,頭が小さすぎるし,球状の形態に近くなりすぎた。更に,赤い色でそのまま制作したため,只の蛸にしか見えない。失敗である。これでは,夏の終わりの商店街の片隅にぶら下がっているかのようなイメージだ。f:id:sakamotozenzo:20170830063440j:plain

 色を変え,オリジナルのイメージのように頭部を大砲の玉のような形にして少し大きめにしたらどうなるだろうか。試行錯誤は続くのであった。