小国び塾活動日誌

藤浩志プロデュースによる「小国び塾」参加メンバーが、坂本善三美術館の収蔵品から発想して取り組む「アートなプロジェクト」の記録です。

はるのこうりんさんのプロジェクト

展示順にひと作品ずつ紹介します。

 

f:id:sakamotozenzo:20171126163719j:plain 作者名:はるのこうりん(中学3年生)

プロジェクト名:「坂本善三先生が新聞の挿絵のために生み出しはった、楽しく愉快な生物たちを強制的に息を吹きかえらせてお届けする新たなプチ物語というか、その絵の生物たちから漂う何かを感じ取り、自分でもよくわからない何かを作ろうとさっき、そう、いまさっき風呂上がりに考えついたこの題名を基にして作る、なにわでもない、はにわでもない、ニモカでもない、なにか…」

 

坂本善三作品名:「山童閑遊」 インク・紙 1952年 

 

【学芸員より一言】

新聞連載小説「山童閑遊」の挿絵下絵に登場するユーモラスな生き物たちを映像作品にして新たによみがえらせるというプロジェクト。

特筆すべき淀みなさで描かれた本作は、細部にとらわれずに実にのびのびと描かれていて、その自由度・軽妙度は他の善三作品からすると群を抜いています。猿が体操していたり、猫がのんびりしていたり、おじさんが酔っ払っていたり、今にも動き出しそう。

それを文字通り「動かした」のが、このプロジェクトです。

善三先生の生前にはなかった(でも今では一般的な)技術を使って、デジタルネイティブの中学生が、世界で初めて善三作品を映像化しました。このプロジェクトは、「動き出しそう」という、絵を見て心に浮かぶ極めて素直な感想をベースにしながら、それを「二次創作」で表現するというところが非常にイマドキです。昭和の言葉で言うところの「現代っ子」が、リアリティを持って65年前の善三作品と向き合った、次世代へと繋がるプロジェクトだと思います。

 

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中田遊さんのプロジェクト

展示順にひと作品ずつ紹介します。

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作者名:中田 遊(コミュニケーター)

プロジェクト名:「坂本善三へのてがみ」

坂本善三作品名:「光」 リトグラフィ・紙 1980年 ほか 

 

 

【学芸員より一言】

小国び塾への参加をきっかけに、初めて坂本善三の作品をじっくり見た中田さんは、坂本善三からの手紙をもらったような気持ちになったと言います。善三先生へ返事の手紙を書きたい。それがこのプロジェクト「坂本善三へのてがみ」です。展示された4点は、中田さんが特に心惹かれた作品です。

まずは自分の友人たちにこの4点を紹介する手紙を送り、「善三先生への手紙を書いてくれないか」と依頼したのがプロジェクトの始まりでした。

しかし、思うように友人たちからの手紙は届きません。

そんな中、中田さんはハタと気づきました。手紙とは公開を前提に頼まれて書くものではなく、もっと個人的に内省的に書かれるものではないだろうか。

そこで、善三先生に手紙を書きたいと思った最初の気持ちに立ち戻り、自分の思いをハガキにしたためて美術館に送ることにしました。

毎日の暮らしは淡々と過ぎていくものかもしれません。しかしそこに「手紙を書く」というプロジェクトがあることによって、些細な出来事も心を留めるべきものへと変化することでしょう。善三先生と語り合う毎日が、中田さんの暮らしや気持ちをどう変えていくのか、会期中進行し続けるプロジェクトです。

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+zen のプロジェクト

展示順にひと作品ずつ紹介します。

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作者名:+zen(坂本善三美術館スタッフ一同) 

プロジェクト名:「大きな木の種」

坂本善三作品名:「集」 リトグラフィ・紙 1982年

 

【学芸員より一言】

小国び塾へ参加するにあたり、坂本善三美術館スタッフ一同にとって今一番大切にしているものは何なのか、みんなであれこれ考えました。そこでたどり着いたのが、これまで美術館活動を支えてくれたたくさんのみなさんとのつながりでした。優等生な答えに聞こえるかもしれませんが、実際どんな人たちと今までつながりがあったか改めて振り返ってみたところ、思っていた以上に多くの人たちに関わってもらっていたことがわかりました。

そこで、それを目に見える形にしたいと考えたのがこの「大きな木の種」プロジェクトです。これまで美術館活動に関わってくれた皆さんから「種」をもらい、それをつながりの象徴として育てることにしました。館内には、顔の見えるみなさんの「実」をたくさん実らせました。

いただいた種の中には、すくすく育つもの、タイミングが今ではないもの、数年後に花が咲くものなどいろいろあります。人と人とのつながりも そうなのではないでしょうか。いつも芽が出るとは限らない。それでも小さなつながりの種をまきつづけ、大きな木へと育てていきたいと思っています。

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たねもしかけもさんのプロジェクト

展示順にひと作品ずつ紹介します。

 

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 作者名:たねもしかけも(建築家)

プロジェクト名:「床A」

坂本善三作品名:「壁A」 油彩・キャンバス 1958年

 

 

【学芸員より一言】

「壁A」は、坂本善三がヨーロッパ留学中に描いた作品で、作風が抽象へと変わっていく大きな転機となった作品の一つです。小国町在住の建築家 たねもしかけもさんは、「壁A」に対して「床A」を作ろうと考えました。垂直の「壁」と水平の「床」を対比させ、がっちりと存在する作品を、ゆるりとリラックスした場所から鑑賞する装置を制作するというプロジェクトです。

作るにあたり、たねもしかけもさんは自分に次のような課題を課しました。

・くつろぎのパターンを小国町内でリサーチする。

・町内に既にあるもので作る。

・新たに作らない。

日々建築家の目線で小国を散歩しながら見つけたものは、何とも工夫のこらされた農作業の道具でした。本来労働とともにある道具が、ここではきれいに磨いて塗りなおされ、私たちをゆっくり絵に向き合わせてくれます。そして何よりも私たちの心をほどくのは、クスッとしてしまうフォルムにあらわれた人々の工夫。世の中はおもしろいもので満ちていると思い知らされます。

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山下通さんのプロジェクト

展示順にひと作品ずつ紹介します。 

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作者名:山下 通(哲学研究者)

プロジェクト名:「坂本善三を読む」

坂本善三作品名:「構成」 油彩・キャンバス 1974年 ほか

 

【学芸員より一言】

坂本善三は、新聞や雑誌などに折に触れて文章を寄せています。絵の話だけでなく、自分の生い立ちのこと、好きな食べ物、熊本のことなど題材は様々です。それらの文章は私たちにとって、善三先生がどういうことを考えていたのかを知るための一つの道しるべになっています。

山下通さんのプロジェクトは、坂本善三の言葉や、坂本善三について語られた言葉を拾い集め、それらを解釈するものです。そして、その解釈は絵の中からも見出すことができるのかどうか考えたいと言います。

語られた言葉と、描かれた絵。きっと、絵に描き得ないことが言葉で語られ、言葉で語り得ないことが絵に描かれているのでしょう。

でも本当は、私たちの心の中ではどちらも渾然一体となって広がっているはず。

言葉を読んで私たちの心に広がる世界と、絵を見て私たちの心に広がる世界が、互いに交差する世界を見たい。そんな希望を込めたプロジェクトです。

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『善三おばけ』ハルノシュ

あるものが別のものに化ける。

それがお化け。

善三さんの作品の何かが,

別の形になって化けて出てくる。

だから,これまで作ってきた“おばけ計画”のおばけは

全て,お化けなのである。

でも,・・・

善三さんが善三さんに化ける。

それでは,お化けではないような気がする。

とはいえ,

イメージが出て来たので美術館で,大中小と作ってみようかと思案中である。

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写真はその一つである。

 

写真を置きました

さすがに11月末となると、寒さとの闘いで夏の苗たちがしょんぼりしてきました。

残念ですが、シナシナになったものは片付けて、でもプランターから影も形もなくなってしまうのは寂しいので、元気なころの写真をかわりに置きました。遺影的。

 

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夕方には新聞紙をかけ、その上からビニールをかけ、と世話を焼いています。夏の苗も、がんばってくれています。

 

明日、11月25日(土)午後3時から、小国び塾メンバーでクロージングトークですね。メンバーはもちろんのこと、多くの方のお越しをお待ちしています。

 

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ところで、小国び塾メンバーのsawaさん宅のアボカドは芽を出したようですが、ここのアボカドはちーんと息をひそめたままです。