小国び塾活動日誌

藤浩志プロデュースによる「小国び塾」参加メンバーが、坂本善三美術館の収蔵品から発想して取り組む「アートなプロジェクト」の記録です。

プロジェクトデー Ⅰ

9月30日(土)秋晴れの空のもと、小国び塾一回目のプロジェクトデーの日でした。昼下がりにハルノシュさんとはるのこうりんさん、北里香代さんが来館されました。

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ハルノシュさんは新たなオバケを持参されていて、今後の展示の変化にも期待が高まります。

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香代さんのプロジェクト「卵焼き」エピソードをお客さんに書いてもらうコーナーも開設。早速こうりん君が面白いエピソードを書いてくれました。

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次回のプロジェクトデーは10月29日(日)です。

この日は善三美術館にて「アートフリマ」(年2回開催)も行いますので、展示室内でも庭でも一日お楽しみいただけること請け合いです。

塾生の皆さんも、展覧会が気になっているあなたも、どうぞお運びください。

ハルノシュさんのプロジェクト

展示順にひと作品ずつ紹介します。 

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作者名:ハルノシュ(お創造屋さん)
プロジェクト名:「おばけ計画」
坂本善三作品名:「炎」 油彩・キャンバス 1974年 ほか

【学芸員より一言】
完成した作品もきっと動きたがっているに違いない。
そんな仮定から生まれたプロジェクト「おばけ計画」。完成した動かぬ作品をおばけという形にして生まれ変わらせようというものです。
ハルノシュさんは、善三作品をおばけ化するにあたり、子どもたちをはじめとするいろいろな人と作品を前にして話をしました。その中でふと発せられた一言をすくい取って形にしたのがこれらの作品です。
彼らのごく素直な感想は、作品を前にしてその人の心に浮かんだ最初の解釈です。それをさらにハルノシュさんが咀嚼して目に見える形にしました。
確かに子どもは、大人では考えつかないような自由な発想をします。でも本当は大人が考えつかないのではなくて、考えるのをやめていたり、取るに足らないことと自ら一蹴したりしているのではないでしょうか。
おばけ計画は、本当は誰しも心に何かしら浮かんでいるはずの小さな解釈を、それでいいのだと肯定してくれます。作品は私たちに対して常に開かれ続け、動き続けていくものだということを伝えているのではないでしょうか。

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「形:1976ー青い稲妻」ハルノシュ

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「こんな解釈ありなんだ」展で坂本善三美術館の入り口にある「形」(1965)は貸し出しにより10月1日までの展示。10月2日よりその代替作品として,「形」(1976)が出さされる。

 善三さんといえば,40代半ばのフランス滞在からして,アンフォルメルの画家たちをはじめとする抽象指向への影響が少なからずあるだろう。しかし,善三さんの作品からお化けシリーズを制作するようになってから,「形」(1965)は,フランク・ステラが1958年〜1965年まで制作したブラック・シリーズ,「象」は,ジャクソン・ポロックの「緑、黒、黄褐色のコンポジション」(1951)を連想するようになった。気のせいとかもしれないが,私の心に浮かび上がってくる善三作品の残像は,ヨーロッパではなく,なぜかアメリカの抽象表現主義なのだ。

 今回,10月2日より展示される「形」(1976)のイメージの根源はおそらく,御幣。日本,もしくは東洋のモチーフが使われている。フランスやアメリカの雰囲気とはほど遠い。暗がりにたくさんの青い御幣が風に揺られていて,そのすき間を稲妻が走っている。そこには,勇ましい神の気配がする。

 この作品に描かれている御幣を眺めていると,それがお化けが吊り下がっている様子に見えてき始めた。稲妻らしき形までお化けに見える。私はお化け中毒にかかったのだろうか?

 こうなったら,お化けを作るしかない。f:id:sakamotozenzo:20170926225450j:plain

 お化け作品のタイトルは,「形:1976ー青い稲妻」。どこかで聞いたような題名になってしまった。

 展示替えまでに,もう3体,このシリーズのお化けを作りたいのだけれど,時間的にムリかもしれない。

 

 

北里香代さんのプロジェクト

展示目録順にひと作品ずつ紹介します。

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作者名:北里 香代(お弁当屋さん)
プロジェクト名:「卵焼き人生」
坂本善三作品名:「白い空間」 油彩・キャンバス 1980年 


【学芸員より一言】
みんな一度は食べたことがある卵焼き。「卵焼き人生」は、毎日卵焼きを作りながら、人々の卵焼きへの思いやエピソードを集めるプロジェクトです。
北里香代さんは、卵焼きが大好きで、仕事でも毎日卵焼きを作っています。多い時には日に10本も20本も焼くそうです。そんなある日、知り合いの子どもが「うちの卵焼きは甘くない」と話すのを聞き、その小さな一言から各家庭の食卓の様子や暮らしが垣間見える気がしたと言います。その経験がこのプロジェクトへとつながりました。期間中ずっと卵焼きエピソードを集めています。皆さんの思い出もぜひ聞かせてください。
ところで坂本善三は、一枚の葉っぱから無尽蔵に新しい絵を描くことができると語ったそうです。一枚描くごとに心を無にし、常に新しい気持ちで次の一枚へと挑むのです。それはもしかしたら、ちょっとした気温や体調の変化で卵の焼け具合が変わってくる中で、次こそは最高の一本でありたいとベストを尽くす香代さんの姿とも繋がっているのではないでしょうか。

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山本美奈子さんのプロジェクト

展示目録順にひと作品ずつ紹介します。

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作者名:山本 美奈子(小国町地域おこし協力隊)
プロジェクト名:「連帯(二重線で消す)鰹節」(連帯あらため鰹節   と読む
坂本善三作品名:「連帯」 油彩・キャンバス 1967年 

【学芸員より一言】
山本さんのプロジェクトは、このたび小国び塾に参加するために始めたものではなく、日常生活の中で何年も続けている文字通りの「プロジェクト」です。それは、鰹節を普及すること。
ある時、本物の鰹節(本枯れ節という)で取った出汁のあまりのおいしさに衝撃を受け、食の大切さに開眼したそうです。それ以来小さな鰹節削り器と鰹節を常に持ち歩き、ことあるごとに披露して「削ラー」仲間を増やしています。
彼女が「実は鰹節持ってるんです」と言っておもむろに削り器を取出し、ガシガシと削り始めるのはまさにパフォーマンスであり、日常の中である時突然出会う非日常の出来事です。特別な道具立てはなくても、価値観が一転するようなことは起きるということを、この鰹節のプロジェクトは体験させてくれます。
そんな彼女が選んだ作品は、「連帯」。善三先生は「連帯」に社会とのつながりをイメージしていたと言います。山本さんが社会とつながるツールは「鰹節」。彼女の話を聞いていると、この絵が大きな鰹節みたいな気になってきます。

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「黄色い空間ー卵焼き」ハルノシュ

 「こんな解釈,ありなんだ!」展では,“卵焼き人生”というプロジェクトが行われている。このプロジェクトに関連する坂本善三さんの作品は『白い空間』。でもこの作品は白くない。むしろ,グレーだ。作品の中に入り込めば,直にでも,白い雪が空からたくさん舞ってきそうな感じがしないでもない。だから,白い空間なのだろうか。

 あるいは,善三さんの『白い空間』には,世の中の曖昧なグレーの部分を作品が全て吸い込み,残された世界を白く潔い状態にしてしまうような制作意図があるのだろうか。

 卵焼きの断面には,“うず”がある。“うず”はきっと様々なものを飲み込んでしまう。この卵焼きの“うず”と善三さんの『白い空間』の印象には何かしらの共通点がある。それは,ことばにし難いけれど,何れも,人々が背負い続けて堆積してできた何かなのだろう。

 現在,このプロジェクトに合わせて,『黄色い空間ー卵焼き」のおばけを制作中。イメージはあるのだが,思うように形にできずに苦労している。

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明日は味噌汁茶碗持参で美術館へ(mina)

【業務連絡】

明日(16日)のお昼は、お弁当のお供に
鰹節を削って味噌玉をつくって食べます。

 

お昼頃に美術館に来られる方は

「味噌汁茶碗」をご持参ください。

 

味噌汁茶碗、お忘れなく。